第1回 モーツァルト


音楽雑誌「ショパン」への連載
中井恒仁&武田美和子の「2台ピアノを弾こう!」2台ピアノ誌上レクチャー

第1回 モーツァルト
2台ピアノのためのソナタ ニ長調K.448 第1楽章
難易度 ★★☆

「のだめ」でも登場し人気を博した、モーツァルトの2台ピアノのためのソナタ。以前にも科学雑誌「ネイチャー」に、なんと「IQが高くなる」と発表され、ブームになったこともある何かと話題に上がる2台ピアノの名曲で、この曲を弾いてみたいと思う方は多いようです。

モーツァルトが教えていたアウエルンハンマー嬢邸のホームコンサートで、彼女と演奏するために書かれた曲です。なんとも贅沢なコンサートですね。当時、2台ピアノというジャンルの曲は珍しく、まだほとんど作曲されていませんが、歴史に残る名作をそれも短期間で書き上げたモーツァルトはやっぱり凄い!掛け合いや対話のおもしろみ、デュエットやハモリの美しさ、個々の腕の見せ所などもちりばめられ、2台ピアノの魅力が満載です。

オーストリアの山と湖、澄んだ空気と青空が似合う爽やかな明るさ、王宮の優雅さ。ハレルヤの調とも言われるニ長調の、喜びにあふれた躍動感ある作品です。モーツァルトにとってニ長調は特別なものだったと思われます。ソロのソナタK.284、311、連弾のソナタK.381を見ても共通性が感じられます。
歌いやすいメロディーの長い音符や、練習しないと弾けない16分音符には皆さん注意が自然に向くでしょうが、さらに8分音符の刻みをいきいきと、軽やかに弾くと、躍動感が出やすいと思います。

特にモーツァルトでは高い音には特別な魅力があります。明るく澄んだ音色を意識すると音楽が生きてきます。わかっていても、大切にするあまり音が鳴っていない…なんてことが意外とありますので、よく聴いてみてください。

演奏のポイント
1~4小節【譜例1】 厚い和音とユニゾン 出だしは華やかに音に重なりを聴かせたいところです。でもバランスに気をつけましょう。ソプラノ(1stの右手の上の音)は明るく大きめに、バス(2ndの左手)は全体を柔らかくふくよかに包むように。内声側(1st 右手の内声と左手、2ndの右手)をその中に綺麗に埋めるように弱めにしてみましょう
5小節~ 掛け合い mpくらいから始めるのをお勧めします。対話する気持ちを。
9小節~ 上向きの華やかな音階で掛け合い 高い音を明るくイメージし、左手の伴奏の8分音符を軽くいきいきと刻みましょう。
16小節 3度綺麗に 1stが上の音を、2ndが下の音を弾いていますので、2ndは弱めに弾きましょう。一人で綺麗な3度のバランスを確認してみると、いかに下の音を弱く弾いているかわかると思います。
16~17小節 終止形を大切に
17小節~【譜例2】 4つの手の掛け合い A(右手の16分音符)同士の掛け合い、B(左手の8分音符)同士の掛け合い、さらにAの○で囲んだ音とBの音の掛け合い(同じモチーフになっています)。Aのみ、Bのみ、C(伴奏)のみと組み合わせを変えて、二人一緒に練習してみると良いでしょう。
25小節~ 2nd左手の歌 メロディーはやわらかくても芯のある音を、右手はハーモニーを裏で作るつもりで。
31小節~ 同じ高さでのユニゾンの動き 響きがほしいのですが同じ高さだからといって対等に弾くと音がぶつかってしまうので気をつけましょう。
34小節~【譜例3】 2ndの歌の問いかけに1stが返事 例えばこんな会話?「今日はいいお天気だよ」「そう?」「どこかに遊びに行きたいね」「いいね」「湖にしようか」「そうね」・・・
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この曲のCD情報
アルゲリッチ&ラビノヴィッチ、ヘブラー&ホフマン、ペライア&ルプーなど、多くのCDが出ています。私達のも是非聴いて下さいね!

関連曲
モーツァルトのオリジナルでは、ソナタの他にはフーガ、ラルゲットとアレグロ。同時代のものでは、J.C.バッハ(モーツァルトの先生)のソナタ、クレメンティ(モーツァルトと皇帝の前で腕を競い合ったそう)の2曲のソナタ、ブゾーニ編曲の魔笛序曲などがお勧めです。