第6回 ルトスワフスキー


音楽雑誌「ショパン」への連載
中井恒仁&武田美和子の「2台ピアノを弾こう!」2台ピアノ誌上レクチャー

第6回 ルトスワフスキー
パガニーニの主題による変奏曲
難易度 ★★★

Witold Lutoslawski.05.1992 Warszawa. Zdjecia w domu artysty.
Fot. L.Kowalski, W.Pniewski/REPORTER
ルトスワフスキーは、前回登場したショパンと同じポーランド出身の作曲家ですが、活躍した年代はずっと現代――1913年に生まれ、14年前の1994年に生涯を終えました。この曲は有名なパガニーニの「カプリス第24番」を使っての作品で、1941年作曲。初演はピアニストでもあったルトスワフスキー本人です。突飛な和声とノリノリのリズムに支配された意表をつくアレンジに、初めて聴いた人は「なんだこりゃ~??」と目を白黒させるかも?でもじっくり聴いてみると、それぞれの変奏がヴァイオリンの原曲に添っていることがわかり感心させられます。現代風なリズムの鋭利さや、ジャズ風なお洒落感、2台ピアノを巧みに組み合わせた響き、そしてスリル溢れるスピード感と遊び心・・・。短い中にも特徴的な変奏により2台ピアノの魅力を思う存分楽しめる曲のひとつです。

「カプリス第24番」をもとに、作曲家達はこぞってアレンジをしています。リストは大練習曲を、ブラームスは超難曲の変奏曲を、ラフマニノフはピアノ協奏曲形式を、そしてルトスワフスキーは2台のピアノをフルに使ってこの作品に。「その技巧を悪魔に魂を売って手に入れた」とまでいわれたヴァイオリンの技で、当時の音楽家はもちろんのこと、あらゆる人々を熱狂の渦に巻き込んだ鬼才「パガニーニ」の曲をアレンジするなら超絶技巧付きでこの位しないと!というそれぞれの作曲家の熱意が伝わってくるようです。

今月のテクニック
アクセントのつけ方・・・
現代曲はたくさんアクセント指示がある曲が数知れず。どの位の強さや重さのアクセントを付けるか、その場のデュナーミクや曲想によってもそれぞれ変わるところです。ふたりで多様なアクセントをイメージして対比させたり、曲のあちこちで表情あるアクセントが奏でられると、さらに作品が活きてきますね。軽くて踊るような音、金属的で硬質な音、稲妻が走るような音、遠くからズンズンと迫りくるような音、魂をえぐるようなエネルギーのあるアクセント・・・。俊敏さが必要なアクセントは、鍵盤を軽く触れている状態(音を捉えて用意が整っている状態)から押さえつけずに、瞬発的につかみ上げて音を出すような感覚で。リズムのおもしろさを最大限に引き出しましょう。

この曲のCD情報
アルゲリッチ&フレイレ、ペーター&パトリック・ヤブロンスキー、デュオアドモニーなど。

関連曲
興味深い現代作品は、メシアンの「アーメンの幻影」、打楽器も加わるバルトークの「ソナタ」、マルティヌーの「幻想曲」。ブーレーズの「構造」。ジョリベの「ホピ族のヘビ踊り」など。